自家用車の購入や名義変更など、車に関するさまざまな手続きのなかで、何かと出てくる単語の一つに「陸運局」があります。
あまり深く考えず多くの人が使っていますが、実はこのような組織は2020年現在「存在していない」ことをご存じでしょうか。
そこでこの記事では、陸運局という名称が広まった意味・仕組みや役割・運輸局との違いについて解説します。ぜひ参考にしてみてください!
目次
冒頭でお伝えした通り、陸運局という組織は現代の日本には存在していません。
ただ過去には存在していて、日本国内に広く浸透したことから、今なお昔の名残として使われているという事情があります。
世間一般で陸運局と呼ばれる組織の正式名称は、「地方運輸局」という名称です。こちらは国土交通省に属する行政機関で、日本全土で10機関に分かれています。
具体的には、以下の運輸局が各都道府県を管轄しています。
北海道運輸局 :北海道
東北運輸局 :青森県、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、福島県
関東運輸局 :群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、山梨県、東京都、千葉県、神奈川県
北陸信越運輸局:新潟県、富山県、長野県、石川県
中部運輸局 :静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、福井県
近畿運輸局 :滋賀県、奈良県、和歌山県、京都府、大阪府
神戸運輸監理部:兵庫県
四国運輸局 :香川県、高知県、愛媛県、徳島県
中国運輸局 :鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
九州運輸局 :福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県
なお、沖縄の場合は沖縄総合事務局の「運輸部」という組織が、運輸局に該当します。
それぞれの地方運輸局の中には、ドライバー・自動車を取り扱う業者にとって身近な組織「運輸支局」という細かい管轄を任された組織があり、自動車の検査・登録を行う「自動車検査登録事務所」も広く言えば地方運輸局の一部です。
陸運局という名称がすでに正しいものではないのなら、なぜ陸運局という名称が一般化したのでしょうか。
その答えは、かつて存在した運輸省の地方出先機関である「地方陸運局」にあります。2001年のこと、日本では中央省庁再編が行われました。
それまでの1府22省庁から、内閣機能の強化・事務および事業の減量・効率化を目指し、最終的に1府12省庁へと再編されたのです。
その際、国土交通省が発足しており、再編統合された組織は運輸省・建設省・国土庁・北海道開発庁で、これらの省庁が母体となっています。
陸運局というのは運輸省に属しており、統合されてから歴史も浅いため、なかなか新しい名前が馴染みにくいのも無理はありません。
2001年以前から自動車業界に携わっていた人・自動車を保有していた人には、陸運局という表現の方がしっくり来るはずです。
こうして、陸運局という組織が存在しなくなったにもかかわらず、名称だけが残っているのです。この記事でも、説明の便宜上「陸運局」という名称を使って解説を続けます。
ナンバー登録・車検手続きがドライバーにとっては身近ですが、鉄道・船舶・飛行機に関する手続き・施設の管理なども管轄となっており、実に数多くの業務をこなしている組織です。
また、商用車に関する業務も手広く行われています。
具体的には、主に以下のような事業・業務の管轄となります。
より細かく見ていくと、例えば地域鉄道対策、フェリーの旅客航路に関すること、船舶国籍証書の交付、航空従事者の医学適性や航空身体検査の証明、特定操縦技能の審査など、様々なジャンルの業務が見つかります。
陸運局は、もはや「陸運局」という名称が当てはまる業務だけでなく、海や空など幅広い業務を管轄している組織に再編されているのです。
陸運局は、自動車を保有する会社・個人のために、様々な業務を行っています。ここからは、自動車に関する手続きに特化し、陸運局でできることをご紹介します。
自動車を購入する場合、その自動車がどこに駐車されて、誰が保有しているのかを届け出る必要があります。よって、陸運局では以下の登録に関する手続きを受け付けています。
多くの場合、新車・中古車は登録前だとナンバーがついていないので、購入の際に販売業者がナンバーをもらいにいきます。
自動車にナンバーをつけるためには、陸運局で自動車の新規登録を済ませる必要があります。
自動車を保有している人が、何らかの理由で引越すような場合、住所が変わります。また、結婚・改名に伴い名字が変わるようであれば、氏名の変更をしなければなりません。
保有者の氏名・住所・使用の本拠の位置が変更になる場合、陸運局での変更登録が必要です。
売買・譲渡など、所有者の名義変更が必要な場合は、移転登録が必要です。また、引越しに伴い支局の管轄が変わる場合(札幌運輸支局→旭川運輸支局)は、ナンバープレートも変わります。
自動車を廃車にする場合は、抹消登録を行わなければなりません。一時的に公道を走行できない状態にする「一時抹消登録」と、今後同じ車を一切使えない状態(廃車)にする「永久抹消登録」がよく知られています。
その他、車を海外へ輸出する際に必要となる手続きとして「輸出抹消登録」があります。
上記の登録手続き以外では、ナンバープレートの番号変更があります。例えば、ナンバープレートを何らかの理由で紛失した場合、盗難にあった場合などが該当します。
また、自分の希望する数字を車のナンバーに登録する「希望ナンバー」や、各都道府県で用意されている絵柄が入った「図柄ナンバー」の取得申請なども受け付けています。
陸運局で大事な業務の一つに「車検」に関する業務があります。国が指定している検査を受けて、合格した車両に対して発行される「自動車検査証(車検証)」は、陸運局が発行しています。
多くのドライバーは、ディーラーや整備工場で車検を行い、車検証が発行されるものと思っていますが、車検証は国の管轄です。この点について、少し詳しく説明します。
自動車の整備を担当するのは整備士ですが、ドライバー全てが整備士の資格を持っているわけではありません。
よって、ドライバーは車検を通すため、ディーラー・整備工場などで車検を受けます。
しかし、検査を自分でやろうと思えばできるため、多少車について知識のある人は、ユーザー車検という方法で検査を通します。
これを管轄しているのが陸運局で、各種検査項目につき、検査員の指示に基づいて検査を行います。
ただ、一度に多くの車が車検場にやって来ると、検査にもかなり時間がかかりますし、ドライバーの知識・技量によっては検査に通らない場合もあります。
そのため、国は「指定工場」という制度を設け、施設・整備士の数・技術力などを判定し、車検ができると判断した工場には「そちらの工場でOKなら、陸運局側の車検場で検査しなくてもよいですよ」と許可を出します。
そのような理由から、車検はディーラー・整備工場で通すものと理解している人は多いのですが、あくまでも基本は「陸運局管轄の車検場のラインを通す」形となっています。
車検には、主に3種類の検査があります。自動車を取得した時期や、車の構造を変える場合など、それぞれのケースで検査の名称が異なります。
新しく自動車を使う際に行う検査です。一時的に使用を中断していた車が、再度公道を走るために受ける検査でもあります。
多くのドライバーが「車検」と認識しているのはこちらで、車検証の有効期限が満了した後、引き続きその自動車を使用する際に受けます。
自動車の長さ・幅・高さ・最大積載量等の変更が生じる場合に受ける検査です。4人乗りの車を2人乗りにしたり、エンジンを載せ替えたりした場合は、こちらの検査が必要になります。
実際に車検で検査を行う場合、どのような点が検査の対象となるのでしょうか。続いては、ユーザー車検を例に、検査員の指示に基づいて検査する箇所をご紹介します。
ボンネットに打刻されている情報が、車検証・申請書類の記載内容と同じかどうかを確認します。
ヘッドライト・ウインカー点灯・テールランプ・ブレーキランプ・バックランプ・ハザードランプといった、ランプ系統の問題がないかをチェックします。
タイヤのホイールナットの緩みも、ハンマーなどを使い確認していきます。
前輪における「タイヤの横滑り量」を確認します。これは、ハンドルをまっすぐに保持した状態で直進した時、どのくらい左右にずれるかを測定する検査です。
前輪・後輪・パーキングブレーキの制動力をチェックします。
時速40kmを基準として、実際の速度と速度表示器の誤差を計ります。
ヘッドライトの光量・光軸が基準値を満たしているかどうかを確認します。
排気ガスにおける「一酸化炭素」及び「炭化水素」の濃度を確認します。
車両下部にオイル漏れなど、何らかの不具合がないかどうか確認します。
全ての判定に問題がなければ合格となり、万一問題があると認められた場合は、その日のうちに指摘された場所を改善することで、再度受験することができます。
いかがでしたか。現代で陸運局が存在していないという事実は、多くの人が忘れがちです。
それだけ身近だったわけですが、年代によっては運輸局・運輸支局という正しい名称を使っている人もいるため、お互いに混同しないよう注意が必要かもしれません。
また取り組んでいる業務は車のことばかりではなく、鉄道・船舶・航空機も対象となりますから、その点も覚えておきましょう!
廃車をするにあたって最初の一歩は『あなたの愛車の価格を知る』ことです。
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