『所有権解除をしてください』
愛車を手放すときに、クルマ屋さんからそう言われて戸惑ってしまったことはありませんか。聞きなれない専門用語に、何をどうすればいいのか、さっぱりわからない方もいらっしゃるでしょう。
日常生活の中でクルマの車検証を目にする機会はあまり多くないと思います。車検や点検整備を受けるときでも、車内に積みっぱなしの車検証を確認するのはクルマ屋さんです。もしかすると、購入時に一度見ただけでその後は全く手を触れていない、という方が大多数かもしれませんね。
実はこの車検証をよく眺めてみると、所有権解除の意味を理解する手がかりが潜んでいます。漢字がならんでいかにも難しそうに感じますが、その意味がわかってしまえば、どうってことはありません。
この記事では、クルマの手続きがよくわからない方にむけて、所有権解除のしくみとその方法をシンプル丁寧に解説しています。ぜひご一読いただき、あなたのカーライフに役立てていただければと思います。
目次
クレジットを組んで車を買ったら、あなたが完済を終えるまでその車の所有者はクレジット会社になります。この場合、車検証の所有者の欄はクレジット会社の名前がしっかり記載されます。(クレジット会社の他にも自動車販売会社などありますが便宜上クレジット会社ですすめていきます)
ローンが終わるまでクルマの所有者はクレジット会社
このように車検証には”所有者”と”使用者”の欄があります。クレジットを組むと所有者にクレジット会社、使用者にクルマを買った人の名前が記載されます。
所有者があなたでなくクレジット会社の段階では、クルマを自由に手放すことができません。これは『クルマはあなたが使っていいけどローンが払い終わるまでは所有権はこちらにありますよ』という意味です。
もしクルマを手放したい、売りたいと思ったらまずローンを完済し、クレジット会社の所有権をはずしてもらう必要があります。
所有権解除とは
クルマのローンを払い終えて、クレジット会社の所有する権利をはずす手続き。所有権解除を行うことで、クルマの所有者は晴れてあなたのものになります。
またローンの完済が終わっても、この”所有権解除”の手続きをふまないと、いつまでたっても所有者はクレジット会社のままです。そのままではクルマを売ることができませんから、クレジットを組んだらいつかは必ず行う必要がある手続きです。
もしローンの支払いが途中で滞ったら、所有権を持つクレジット会社がクルマを引き上げることも可能です。その場合、そのクルマを残債に充て少しでも残りを回収することになります。
また、クルマを廃車する場合でも所有権解除の手続きは必要なので気をつけましょう。廃車をするときには、車両をスクラップにするのと同時に名義を抹消する手続きをします。
【廃車するとき】
▶車両・・スクラップ
▶名義・・抹消手続き
抹消手続きを陸運局で行うさいに、所有者の承諾書類が必要になります。
ローンを完済したら、クレジット会社が勝手に所有者をはずす手続きをしてくれればいいのに、と思いませんか。それなら何も面倒はなくラクですよね。
しかし、あくまでクレジット会社は完済が終わりました、という連絡をくれるだけです。手続きまではしてくれません。こちらから所有権解除を依頼する必要があるのです。
所有権解除の手続きは自分から連絡する
ここでローンを完済したときに、2つの選択が生まれます。
A ローンが終わった!所有権を自分に移そう
B ローンが終わった!でも面倒だしそのままでいいや。
クルマを手放すときに所有権解除すればいいよね。
上記のケースでBを選ぶ人が圧倒的に多いです。
この理由の一つに、自分から手続きを依頼しなくてはならない、ということがあります。何だか面倒で手間がかかりそうですし、そもそもクレジット会社の所有権がついたままでも、乗る分には何の支障もありません。
最終的にクルマを手放すときに所有権解除すれば問題ないのだから、であれば今すぐではなく手放すときにしよう、という考え方です。
クルマのオーナーが”所有権解除”という言葉を意識するタイミングは2つあるということですね。
所有権解除のタイミング
●1回目 ローンが完済したとき
●2回目 クルマを手放すとき
ほとんどの人がクルマを手放すときに手続きしますから、そのタイミングで世話になる買取り業者や自動車ディーラー、廃車業者などクルマ屋さんに状況を尋ねられる機会が増えます。
クレジットの期間がまだ残っていても、繰上げ返済をしてローンを払い終えることができます。
【クルマの買い替え時によくあるケース】
クレジット残債額 | 60万円 |
クルマの査定額を充てる | ▲60万円 |
クレジット残額 | 完済 |
買い替え時に査定の金額をそのままクレジットに充てる購入の仕方はよくあることです。そのときもやはりローンを払い終えたことになりますので、所有権解除をする必要があります。
前章の”ローン完済”と”クルマを手放す”をいっぺんに行いますから、ほぼこのタイミングで所有権解除も同時にすることになります。
繰上げ返済が済んだら所有権解除をする
所有権解除をする方法はとても簡単です。わかりやすく7つのステップにわけてお伝えしていきます。
【所有権解除の依頼 おおまかな流れ】
ステップ1 車検証と完済証明書を手元におく
ステップ2 所有者の欄にある会社に連絡
ステップ3 ”所有権解除をお願いします”
ステップ4 車両情報やクレジット情報を伝える
ステップ5 必要書類を教えてもらう
ステップ6 郵送する
ステップ7 所有権解除書類が送られてくる
次章から細かく見ていきましょう。
まず車検証と完済証明書を用意しましょう。この書類を見ながら連絡すると話がとてもスムーズに伝わります。
完済証明書
ローンの支払いが完了したことを証明する書類です。通常、クレジット期間の満了後に自宅に郵送されてきます。ここにユーザーIDなどが記載されていますので、所有権解除の依頼時は手元において連絡しましょう。
もし車検証をなくしてしまった方はこちらの記事をご参照ください。
『車検証の再発行ってこんなに簡単だったの!?紛失しても慌てない安心ガイド』
所有者の欄を見ると、所有権のついた法人の名前が記載されています。
例1 〇〇自動車販売株式会社(ディーラー系)
例2 〇〇信販株式会社(クレジット会社系)
例1のように販売会社の所有権がついているときに気をつける点があります。それは必ずしも所有者の会社名と、クレジットを組んだ会社名が同じだとは限らない、ということです。
たとえば、トヨタ系列ならクレジットはトヨタファイナンスで契約をします。完済証明書はクレジットを組んだトヨタファイナンスから送られてきますが、所有権はトヨタ販社でつけるのが普通です。
日産系列なら、ニッサンフィナンシャルサービスがクレジット契約の窓口ですが、所有者は販社の名前です。所有権解除を依頼するときは、車検証の所有者に記載される会社が窓口になりますので、混同しないよう注意しましょう。
車検証の所有者の欄に記載されている会社に連絡する
一番話しが早いのは、クルマを購入したときの担当営業さんに直接連絡することです。アフターフォローなどで何度も顔を合わせていますし、何かあれば担当さんに伝えるのがスムーズです。
信販会社でも同様です。まずは販売担当の営業さんに所有権解除の旨を伝えると必要事項を教えてくれます。
伝える内容は各会社によって異なりますが、だいたい以下の通りです。
●名前
●住所
●生年月日
●クルマの登録番号
●車体ナンバー
●クレジットの契約番号
必要書類も各社によって異なります。だいたい以下の通りです。
●車検証
●印鑑証明書
●委任状
●完済証明/契約終了のご案内など
●所有権解除 書類交付依頼書
●自動車税の納税証明書
●返信用封筒と切手
※印鑑証明書は発行日より3か月以内のもの
車検証の住所と現在の住所が異なるときは、その転居履歴をつなげる必要があります。1度の転居なら住民票に前住所が記載されますので、印鑑証明書プラス住民票で大丈夫です。
2度以上の転居になると、戸籍の附表などを揃える必要があります。確実な方法は役所の窓口に車検証と印鑑証明書を持っていき、”ここからここまでの住所をつなげてください”と伝えるやり方です。いちいち転居先を説明していくより話しが早いです。
また、結婚などで名字が変わっている場合も同様です。前の姓と今の姓を書類でつなげる必要があります。この場合は改正原戸籍や戸籍の全部事項証明書を取得すれば大丈夫ですが、念のため役所の窓口でつなげてもらうようお願いしたほうがいいでしょう。
車検証と印鑑証明の住所、名前をつなげる
個人情報や印鑑証明書など大切な書類を送るのですから、十分に気をつけて郵送しましょう。また必ずしも車検証の所有者住所の欄に送るとは限りません。必ず送付先を確認しましょう。
事故やトラブル防止のため”簡易書留”でおくる
1週間から2週間ほどで自宅に所有権解除の書類が送られてきます。やはり簡易書留など配達記録の残るかたちで送られてくるでしょう。
さて、これで所有権解除が終わった! と思うのはまだ早いです。
実は送られてきた書類は所有権解除が終わった書類ではなく、所有権解除ができる書類なのです。
次章で細かく見ていきましょう。
先ほどのステップをふんで手に入れた書類は、所有権を持っていた会社が”所有権が移ることを承諾しましたよ”、という意味の書類です。
この書類をどうするか、それはあなたがこの先何をするかで、決まってきます。
このケースでは、手に入れた所有権解除の書類を陸運局に持ち込み、移転登録の手続きをする必要があります。
所有権解除の書類を手に入れた
↓
その書類を持って陸運局へ
↓
所有者を信販会社から自分に移す”移転手続き”
↓
車検証の所有者が自分に変更される
自分でわざわざ陸運局に手続きをしに行かなくてはなりません。これはかなりの手間で、そこまでの労力をかけて所有者を自分にするメリットがあるのかは判断の別れるところでしょう。
もしディーラーの所有権がついている場合は、書類出しだけでなく、この移転登録までまとめて依頼するのも一つの手です。一括して手続きをしてくれる販社も多いですから、まずは担当の営業さんに確認をとってみましょう。
信販系の所有権がついている場合は、ほぼ自分で動くことになります。
自動車販売会社の所有権解除 | 書類出し+所有者の変更手続きまで一括して依頼してみる |
クレジット系信販会社の所有権解除 | 書類を手に入れたら自分で陸運局へ |
クルマを手放すために所有権解除の書類を手に入れた場合は、このあと特にすることはありません。売り先にそのまま書類を渡せば、あとはそこが移転登録をしてくれます。
自分が書類上所有者になることを飛ばして(売ってしまうので)、所有権をもつ会社から直接つぎのユーザーに名義を変える方法です。
クルマを手放すときに行う所有権解除はそのまま売り先に渡せばよい
いかがでしたか。所有権解除のしくみや流れがお分かりいただけたでしょうか。
どのタイミングで所有権解除をするのかがポイントになってくるのですが、それは自分がどうしたいかによって変わってきます。おすすめは、ローンが終わったらすぐに所有権を自分に変えることです。
ただしこれは自分が少しも動かなくていい(陸運局に行かない)場合に限ります。4章でお伝えしたように、自動車販売会社の所有権がついていて、なおかつ一括して先方が手続きしてくれるという条件が重なったときにできる方法です。
ローン完済後すぐに所有権の移動が終わってしまえば、今度はクルマを手放すときにバタバタしなくてすむようになります。まずは完済のタイミングで一度相談してみるといいでしょう。
一方、自分で陸運局まで足を運ばなくてはならないのであれば、ローン完済時ではなくクルマを手放すときで十分です。
いつかはクルマを手放すときが来て、その際には必ず所有権解除が必要になります。クレジットを組んでクルマを購入された方はぜひこのことを覚えておきましょう。
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